HALF SEAS OVER : Half Seas Over

Beat Records / Brownswood Recordings 2010

bg

ジャイルス・ピーターソン主宰のブラウンズウッドに『Scheme For Thought』『The After Suite』という2枚のアルバムを残すNYのピアニスト/作曲家、イラン・メーラーがシンガー・ソングライターのアダム・マクブライド=スミスと組んだプロジェクトが、このハーフ・シーズ・オーヴァー(HSO)。

ビル・エヴァンスのスタイルにショパンやドビッシーといったクラシック・ピアノからの影響も感じさせ、そしてスティーヴ・ライヒをはじめとした現代音楽やアンビエント的な匂いも感じさせるメーラーと、オルタナ・カントリーやフォーク・ロックをメインに活動するマクブライド=スミスとはあまり縁が無さそうに見えるが、現在はフランス在住のマクブライド=スミスがブルックリンに住んでいた頃に2人は知り合い、そして異なる音楽をやっていたからこそ逆に惹かれ合う部分もあったようだ。『The After Suite』にマクブライド=スミスがゲスト参加する形でコラボが始まり、そして本作へと繋がっていく。端的に言えばジャズとフォーク・ロックの融合ということになろうか、楽曲によっては時にロバート・ワイアット、時にテリー・キャリアーなどが想起されるものもある。

そもそもジャズとフォークやトラッドの融合は60年代末のブリティッシュ・ジャズの世界でも見られたものであり、モーダル・ジャズが発展する上においてフォークロアや民族音楽の要素は大きな触媒にもなってきた。そう考えると本作のようなアルバムは為的なものではなく、極めてナチュラルな状態から生まれたものではないだろうか。繊細で素朴で、シンプルで美しくて、エコだとか癒しとかで片づけられない作家性があり、押しつけがましくない強い音楽。今の世の中、こうした音楽があってもいい。

by 小川充
6-28-10