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Massive Attack: Heligoland
Virgin Records 2010
Massive Attackの7年ぶりの新作、とは言うけれども前作『100th Window』が3Dのソロアルバムと言われる作品だった事を考えると、ダディ・Gが全面的に制作へ参加した本作は『Mezzanine』以来の12年ぶりの新作とも言える。『100th Window』はダークではあるが、それ以前までの彼らの大きな魅力であった「黒さ」が欠落した作品だったと感じた。その欠落の原因はダディ・Gが参加していない事にあったのか、脱退したマッシュルームにあったのか?私はその答えを探しているわけではない。しかし<!K7>からリリースされていたダディ・Gの手による真っ黒なグルーヴ溢れる『DJ Kicks』を聞き、本作『Heligoland』のリリース前の情報の中にダディ・Gが制作に復帰するというのはこのアルバムの内容に期待を持たせるに十分だった。
だが『Heligoland』は私の心を動かす事はなかった。性急なビートは引っかかるものがなく、単調に、さらりと耳を流れていく。Massive Attackの魅力について、粘り付くような黒さにそれを感じていた私にとってこの黒さがないのは致命的であった。ゲストボーカリストを多数迎えてはいるものの、ボーカリストを際立たせるようなトラックが出来ていないから、どのボーカリストも存在感がない。ビートの強度もなく、新しいリズムへの追求もボーカリストの情念も感じられない。彼らは上っ面はアンダーグラウンドを謳いながら、上品なだけのBGMを作り続けるグループとなってしまったようだ。
このアルバムがリリースされた時、新宿のタワーレコードに行ったら「ブリストル・サウンド特集」なるブースが設けられていた。今でもMassive Attackはブリストル・サウンドそのものなのだ。彼らが動けば人々はブリストルに目を向ける。そこに目を向ければ今なお、ブリストル・サウンドがPinchのようなアーティストによって受け継がれている事がわかるだろう(昨年、Horace AndyがX-Press2のAshley Beedleと共作したアルバム『Inspiration Information』に収録されている“Watch Me”をPinchがリミックスしているのだが、そのリミックスは今のMassive Attack以上に「ブリストル・サウンド」だ)。Massive Attackの功績を語る時、これ以上の事を言う必要があるだろうか?
『Heligoland』は残念ながら退屈なアルバムだ。しかし例えそうだとしても今なお、ブリストル・サウンドは刺激的に生き続けている。その源泉は彼らがいなければ湧き出てこなかったと思えば、このアルバムが退屈なことなんて些細な事だ。Massive Attackに栄光あれ。
by 加賀琢磨
7-08-10

