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How to Destroy Angels: How to Destroy Angels
The Null Corporation 2010
インダストリアル・ミュージックの先駆者と言われているCoilは1984年に12インチ・シングル"How To Destroy Angels"でデビューした。その後、Coilの活動は多くのアーティストに影響を与える事となった。Nine Inch Nailsの首謀者、Trent Reznor(トレント・レズナー)もCoilに影響を受けた多くの人々の内の一人である。Coilからの影響を公言し、Nine Inch Nailsの作品のリミックスを依頼した事もあったし、その過激さからお蔵入りになった映像作品『Broken Video』のディレクターはCoilのPeter Christopherson(ピーター・クリストファーソン)だ。
Nine Inch Nailsは2008年にJane's Addictionとツアーを行い、2009年にはPeter Murphy(ピーター・マーフィー)をツアーに同行させた(Jane's AddictionとPeter MurphyもTrent Reznorが影響を受けた事を公言しているアーティストだ)。そしてその夏をもってTrent ReznorはNine Inch Nailsのツアー活動を凍結させた。2010年、自身の妻であるMariqueen Maandig(マリクィーン・マーンディグ)と近年のNine Inch Nailsのスタジオワークにおいてプログラミング作業を行っていたAtticus Ross(アティカス・ロス)と共に---その名はCoilのデビュー作のタイトルから拝借したであろう---How To Destroy Angelsをスタートさせた。
2008年と2009年のツアーは同行したアーティストへの恩返しの意味もあったと聞く。このHow To Destroy Angelsの名前が人々の目に留まり、その過程でCoilとそのデビューシングルに再び光が当たるとなれば、このEPはCoilに対する恩返しとなり、つまりこのプロジェクトは2008年から続く「恩返し」を今度はCoilへ向けた...と言うのはこじつけだろうか?
本作の内容はシンプルなリズムで構成されたミドルテンポの楽曲が並ぶ。それこそインダストリアル・ミュージックと呼んでも差し支えがなさそうな音色のビートを支えにして、そこにノイズが、砂の山が雪崩となって広がるように鳴り響き、サウンドを無機質な砂色に染めていく。そうしたトラックに控えめに歌い上げるマーンディグの声が乗る。全体としてインストゥルメンタルに重点が置かれて、ボーカルも楽器の一つとなっている印象を受ける。Nine Inch Nailsがアッパーもダウナーも両方を含めた意味での激情的なボーカルとマシン・ビートをぶつけるようにして楽曲として成立させるスタンスだったのに対し、How To Destroy Angelsのボーカルは熱を帯びているが抑えているようであり、ぶつけると言うよりはバランス良く融合させて楽曲を成り立たせているところがNine Inch Nailsとの違いだと思う。そしてこのEPを聞く限りでは、その方向が「素晴らしい」とまではいかないまでもそれなりに良い成果は生んでいる。
とは言え、ここで聞けるこうしたサウンドは晩年のNine Inch Nailsのサウンドそのものだし、ボーカルが変わったという点以外の新しさを見いだす事が出来ないでいる。いずれにせよプロジェクトについて何らかの決定的な評価をするには楽曲が足りなさすぎる。評価のための材料がない一方で、今後の展開を期待してもいいだろうと感じさせるポジティブな作品だ。
by 加賀琢磨
7-14-10

